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COVID-19と糖尿病療養指導特集 -Withコロナの糖尿病療養指導-

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「新型コロナ対策の理学療法」

河江 敏広
東都大学幕張ヒューマンケア学部理学療法学科
 

 2020年4月に入り新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止のため、3密を避けることや外出自粛などが要請されました。このことにより、運動施設の一時閉鎖や患者の身体活動量の低下が認められるようになり、実際にロコモチャレンジ!推進協議会による新型コロナウイルス感染症による運動への影響に関する生活意識調査1)では、昨年度と比較し「外出減」は52.6%、「運動減」は40.3%の対象者に認められたことが報告されています。糖尿病療養指導における理学療法としては主に運動指導のため、指導スタッフは十分な感染対策を行って運動指導を安全に行う手段の構築が必要です。我々は、密を避けることを目的として、昨年6月より運動指導室に入室できる人数を集団指導では8名から4名に制限ししています。さらに、個別指導などの直接指導を行う際は、指導者側はフェイスシールドおよびマスクを装着し、患者にはマスクのみの装着を行い、換気を十分に行った環境で運動指導を行っています(写真)。また、来室を控える患者も増加傾向のため、患者の運動能力に合わせた室内でできる運動の動画やアプリの紹介を行い、来室しなくても運動を楽しく実施できる手段の提供も行っています。私たちが指導に用いている動画は日本糖尿病協会ホームページ2)に掲載されていますので是非ご活用ください。

運動指導
写真:感染対策を行った実際の運動指導場面

 今後はCOVID-19感染やそれに伴う身体活動量低下の影響によって運動機能低下を来した患者が多くなることが予測されます。今後、理学療法としてはこのようなアフターコロナに向けた対策も構築していく必要があると考えます。
 

【参考文献】
1.日本糖尿病協会ホームページ (2020. 2. 16確認)
https://locomo-joa.jp/news/official/post_66.html

2.日本整形外科学会ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイト (2020. 2. 16確認)
https://www.nittokyo.or.jp/modules/patient/index.php?content_id=89

 



「新型コロナウイルス感染症における栄養管理室での対応」●●

富井 三惠
独立行政法人国立病院機構相模原病院 副栄養管理室長
 

 当院は神奈川県相模原市にある458床の急性期病院で、新型コロナウイルス感染症対策の医療体制「神奈川モデル」における重点医療機関です。

【 基本的感染対策 】
 職員は検温を含む毎日の体調確認を行い、標準防護具としてサージカルマスクとアイシールドを着用しています。病棟移動、食事前等手洗い励行の他、スイッチ類、パソコン、机、PHS、ドアノブ、コピー機、戸棚等共有物接触後も手洗いや手指アルコール消毒を行います。

【 栄養食事指導 】
 原則面会禁止対応中のため入院栄養食事指導で家族への指導が必要な場合は、外来栄養指導室にて入院患者と交差しないよう実施しています。栄養指導室の環境整備として、換気、指導終了毎にエタノール含浸除菌クロスで清拭を行います。指導室内の密を避けるため栄養指導予約枠を調整しています。必ず指導前に「感染症トリアージシート」(患者および家族の体調)の確認を行い、アクリル板を隔てて指導を実施しています(図1)。

【 チーム医療 】
 カンファレンスは広い部屋で換気して行い、COVID-19(疑い)患者についてはカルテ診のみ実施しています。

【 COVID-19(疑い)患者の食事提供 】
 ディスポ食器(図2,図3)で提供ののち感染性廃棄物として廃棄され、トレーは個室専用として退院時に病棟で消毒後栄養管理室へ返却され通常洗浄しています。乳児はディスポ哺乳瓶に調乳(図4)、乳首は個室専用として消毒しながら使用し退院時に感染性廃棄物として廃棄しています。

 

栄養指導室        
 図1 栄養指導室           図4 ディスポ哺乳瓶 
ディスポ食器1  ディスポ食器2
 図2 ディスポ食器1              図3 ディスポ食器2 

 



「COVID-19に寄せて―検査―」

佐藤 麻子
東京女子医科大学 臨床検査科・糖尿病代謝内科
 

 COVID-19パンデミックの始まりから約2年、もうマスクやゴーグル、手洗いの感染対策は日常となりました。2020年は、この感染対策のお陰で新型コロナウイルス以外のインフルエンザやノロウイルス感染症は激減しており、感染対策の有効性を改めて認識しました。一方、2019年に流行しなかったために免疫のない子供が増え、パンデミックになってしまったのが2021年のRSウイルス感染症です。今冬は同様の理由でインフルエンザが増えるのではないかと言われており、警戒が必要です。

 新型コロナウイルスのPCR検査は、検体採取時も検査時も、検体を扱う時はフルPPE(personal protective equipment:個人用防護具)で行います。もし、インフルエンザが流行した場合、風邪症状で来院した患者さんに対しては、新型コロナウイルスとインフルエンザウイルス両方の検査のため、鼻腔ぬぐい液を2回採取するという、煩雑な作業を強いられます。当院ではFilm Array法の機器を導入し、18種のウイルスと3種の細菌を1回の鼻腔ぬぐい液で同時に検出することが可能となりました。しかも、約1時間で結果が出ます。しかし、まだコストが高くどこでも簡単に機器を導入できるものではありません。コロナ禍においては新しい機器も着々と開発されており、精度が良く安価で利便性の良い機器の登場が期待されます。

Film Array法
図:Film Array法

 



「Withコロナの理学療法」●●

北村 健人
春日井市民病院 リハビリテーション技術室
 

 当院では2020年12月に病棟で新型コロナウイルス感染症の院内集団感染(クラスター)を経験し、より一層スタッフ一丸となって感染拡大防止に尽力しています。

 2021年に当院に入院され、理学療法介入を行った60歳以上の糖尿病患者のうち、81 %がサルコペニアもしくはプレサルコペニアに該当することが分かり、Withコロナの今、運動療法の必要性を再認識しています。

 当院では理学療法の際は患者のマスク着用の徹底、スタッフは手指衛生やマスク・手袋着用の徹底、定期的な換気、患者使用毎の器具の消毒を行っています。クラスター発生後は感染対策部会に全職種がリンクスタッフを設け、定期的に手指・環境衛生面のチェックを受けています。また理学療法は業務体系を病棟担当制に変更し、一層、感染予防の体制強化を図っています。

 糖尿病療養指導として、理学療法士は運動療法を中心に担い、患者の個別性に合わせホームエクササイズのメニューを考案し、実践しています。またコロナ禍以前よりチーム医療として糖尿病教室(2日で全8コマ・各40分)を開催しております。現在は最大4名の人数制限を設け、感染予防に配慮して継続しています。

 当院は高度肥満・糖尿病の外科的治療を5年前から開始しており、令和3年度に日本肥満症治療学会に承認され認定施設となりました。Withコロナの今だからこそいつも通りの安全な糖尿病治療、療養指導ができるよう、日々スタッフ全員で心掛けています。 

感染予防に配慮した運動指導の場面
図:感染予防に配慮した運動指導の場面