理事長挨拶

日本糖尿病療養指導士認定機構

理事長 宇都宮 一典

医療法人財団慈生会 野村病院常勤顧問/東京慈恵会医科大学教授

 糖尿病診療におけるメディカルスタッフ専門職の育成を目指し、2000年2月、日本糖尿病療養指導士認定機構が設立され、2025年には25周年を迎えます。設立から今日に至るまで、脈々とこの理念は継承され、機構は着実に発展してまいりました。現在の認定者数は、全国で約1万七千人にのぼっています。この間、CDEJの活躍には目を見張るものがあり、今やその存在なしでは、高度・良質な糖尿病医療の提供は不可能と言っても過言ではありません。また、活動の場はクリニック内に留まらず、在宅医療、災害医療、健康・福祉行政など多岐に及んでおり、我が国における糖尿病医療のあらゆる領域でリーダーシップを発揮しています。

 その半面、新たな課題にも直面しています。糖尿病診療を取り巻く環境は、大きく様変わりしつつあります。設立当初、CDEJには糖尿病専門施設の病棟や外来で患者教育・療養指導に従事するロールモデルが想定されており、機構の規約もこのイメージに沿って策定されてきました。しかし今、糖尿病をはじめとする慢性疾患の診療は、厚生労働省が進める地域包括ケアシステムの中核に位置付けられ、病院から在宅診療に至るシームレスな連携の中で行われるものとされています。これに伴って、CDEJは専門病院から介護まで、多様な医療現場に出ていかなければならなりません。しかも、患者との距離が狭くなるほど、医師の手から離れ、自身の裁量で決めなければならないことが増え、責任は重くなるのです。社会はそれを求めているとも言えます。その要請に応えるには、質の高い医療技術はもとより、個々の患者のニーズを把握する確かな見識とそれに基づく多職種の有機的な連携が必要です。CDEJのライセンスは、こうした責務に耐えうることを示す証となるものででなければなりません。

 CDEJが果たすべき役割は一層大きくなる一方、その資質は常に問われることになるでしょう。まもなく25年目を迎えるCDEJ認定機構は、時代の変化を踏まえ、親学会である「日本糖尿病学会」「日本糖尿病教育・看護学会」「日本病態栄養学会」とともに、そのブランドに相応しいCDEJの育成を目指して、これからも専心努力してまいります。

2024年8月